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会計監査院が東京五輪・パラリンピック経費3兆円

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東京五輪パラリンピック経費3兆円

☆7000億円がいつの間にか3兆円に...
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2018年10月4日、会計監査院は2020年東京五輪パラリンピックをめぐる国の支出額が8,011億円に上るとの試算を明らかにしました。これまで国は、大会関連予算を1,127億円と説明していますが、なんと7倍以上に膨れ上がっている現状だということです。

驚くことはここからで、このままだと、東京都と大会組織委員会負担分を合わせると、全体の支出が2020年までになんと3兆円に達すると報じられています。

3,3,3兆円ですよ...

 確か「コンパクト・オリンピック」とか言ってませんでしたっけ。

2012年7月28日0:18の猪瀬直樹東京都知事(当時)のツイートです。

誤解する人がいるので言う。2020東京五輪は神宮の国立競技場を改築するがほとんど40年前の五輪施設をそのまま使うので世界一金のかからない五輪なのです...

 東京五輪誘致のとき、たしか7,000億円でできると言っていたような気がします。

 細かい部分で「なぜこんなに膨れたのか」よりも、もっと大きな部分で考えたいと思います。そもそも数字の桁が違います。計算間違いの度を越えています。見誤るとか、見通しが甘いのレベルではありません。

イレギュラーなことが起こったとか、追加事業が増えたとかのレベルではない数字の開きです。

0.7兆円が3兆円ですからね。

最初からわかっていた「確信犯」としか思えません。

☆なぜ東京オリンピックの予算は3兆円に膨らんだのか
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これ、一般企業なら絶対にありえない話で、誘致担当者が「くび」ですむ話のレベルではないです。誰も責任を取れないですでいます。今の段階で、責任を取る話なんてどこからも出てきてはいません。

東京都も国も、東京都民も国民も、みな「仕方がない」という空気感でいっぱいです。

一般企業なら、この事業そのものが中止になる話です。

数字の取り方や数字の中身の問題はひとまず置いておいて、なぜ7,000億円が3兆円にまで膨れ上がった「心の隙間」を考えて見ましょう。

○「オリンピック」だから

この言葉は、多くの批判を封じ込める「印籠」のようなものです。幕末における新政府側の「錦の御旗」と同じです。「選手のため」と言われると批判しにくい風潮が作られました。

オリンピックの前では何をしてもよいのでしょうか...

○誘致しやすいように予算を低めに算定

競合に勝つためには必要な手段であることは理解はできますが、予算と見積もりと実際の費用とがこんなに違うということは、どう説明できるのでしょう。


☆なぜ東京オリンピックの予算は3兆円に膨らんだのか~オンブズマンの問題
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オンブズマンが機能していないとも言われます。

オンブズマンは、スウェーデンに始まった、国民に代わって行政活動を監視し、また国民からの行政機関に対する苦情を処理する者となっています

ただ、この東京五輪パラリンピック全体の事業に対して、最高責任者が不在であることが驚きです。

2020年の東京大会には東京都、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会、日本オリンピック委員会(JOC)、日本パラリンピック委員会(JPC)という4つの団体がかかわっており、「誰が最高責任者なのか」はあいまいで、予算が増えようが誰の責任にもならない状態でした。

東京都は、ほかの地方自治体と比べて桁違いに予算が潤沢にあり、経済的な危機意識が希薄だったのではないかという意見もあります。

   知事交代が続き空白期間を生んだ...
   有名人が知事になったから...

これが費用が膨らんだ理由になるのでしょうか。もうわけがわかりません。

オリンピック・パラリンピックは東京都の問題で、日本全国の関心事ではないというところに、ある意味、盲点があったのかもしれません。

当初予算には維持費を考えていないという話もあります。


☆今までの大会経費は...
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運営費史上最高額は2014年ソチ冬季オリンピックで、約5兆円が投入されました。なかでも交通インフラの整備が最も高く、約3兆円が投入されました。

この大会は、プーチン大統領が国を挙げて世界にロシアをアピールする要素もあり、オリンピックをきっかけに国内のインフラ整備を大規模にオリンピック費用として計上させたことも考えられます。

オリンピック経費に何を見積もるかも、国によって異なるので一概に横並びに比較できません。

楽天証券が「オリンピックの運営比較」をホームページに掲載しているものを見てみますと...

2014年冬季ソチ五輪 500億ドル
2008年夏季北京五輪 430億ドル
2004年夏季アテネ五輪 150億ドル
2016年夏季リオデジャネイロ五輪 108億ドル
2012年夏季ロンドン五輪 104億ドル
2000年夏季シドニー五輪 66億ドル
2006年冬季トリノ五輪 36億ドル
2010年冬季バンクーバー五輪 17億ドル
2002年冬季ソルトレイク五輪 12億ドル

数字がないと話ができないので、楽天証券HPの数字を載せましたが、他にもいろんなところが掲載していますが、その数字はバラバラで、何を費用に含めるのかで全然違ってきています。

韓国のソチ五輪は新幹線整備費用も含まれているという話ですし、リオデジャネイロ五輪では五輪経費こ含ませていないものがあるようです。

また、開催後に予定外の費用も出てくるようで、オリンピック費用は正確に把握できないもののようです。

ただ、東京五輪パラリンピックに関しては、なぜ、7000億円が3兆円にまで増えるのか。それなのにどうして組織委員会は、3兆円ではなく、1.6~1.8兆円で開催できるといまだに言っているのでしょうか。

さっぱりわかりません。

猪瀬都知事(当時)は「われわれは45億ドル(約4500億円)の開催準備金をすでに積み立てている。これはキャッシュで銀行にある」と述べていましたね。

東京五輪費用は少なめに、大会開催後の予定収入は多めに...

これで全ての収支を合わせようとしている感じです。


☆理想的な気候
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東京都がオリンピック・パラリンピック誘致の際の「立候補ファイル」第一巻の仲の「テーマ2:大会の全体的なコンセプト」に以下の記述があります...

2020年東京大会の理想的な日程

東京での2020年オリンピック競技大会は
7月24日(金曜日)の開会式に続いて、7月25日(土曜日)から8月9日(日曜日)までの16日間で開催し、閉会式は8月9日(日曜日)に予定するまた、パラリンピック競技大会は8月25日(火曜日)から9月6日(日曜日)までの開催を予定する。

この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である。また夏季休暇に該当するため、公共交通機関や道路が混雑せず、ボランティアや子供たちなど多くの人々が参加しやすい。さらに、この時期は日本全国で伝統的な祭が多く開催される時
期であることから、祝祭ムードが漂っている。また、重要な点として、この開催期間は他の大規模な国際競技大会とのスケジュールと重複しておらず、東京においても大会開催に影響を及ぼすような大規模イベントの開催を予定していない。

日本列島は連日猛暑に見舞われていたこの時期を、「温暖でアスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候」とプレゼンしています。

 ちょっと嫌味な表現ですが、温暖で理想的な気候としながらも、国土交通省2015年から複数回にわたり有識者会議を開き、オリンピック期間中の暑さ対策について話し合ってきました。

有識者の話し合いの結果、導き出された答えは、

打ち水のほか、浴衣、よしずの活用など日本ならではの対策を盛り込み、観光PRにも生かす...

 というものです。

期間限定のサマータイム導入という話もありましたね。

秋に行われた前回の東京オリンピックと違って、今回の東京五輪パラリンピックを夏開催で誘致をした背景には、アメリカの事情があると、陸上の元日本代表選手である為末大氏はTwitterで次のように呟いています。

みんなこんなに暑くて大変なこの時期にオリンピックをやるなんてオリパラ委員会は何をやってるんだと言うけれど、アメリカのプロスポーツの間を縫うためにあそこしかできないのが本当のところだと思うので、苦情はNBCとかIOCに伝えた方がいいと思う...

 NBCアメリカの3大ネットワークのひとつです。アメリカのテレビ局の「夏枯れ」対策との指摘もあります。

もっとも日本側としても、東京誘致を確実にするために、7月から8月の間に開催する日程でないと東京にオリンピックは呼べないと認識したうえで、東京が野外で激しい運動をできるような気候でない猛暑(酷暑)であることを言わないでプレゼンしたのでしょうね。


☆「オールジャパン」ってなに
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東京五輪パラリンピック大会組織委員会文部科学省に文書を出し、それが都道府県などを通じて、全国の学校にも配布されました。

表題は、「2020年東京大会の開催におけるご理解・ご協力のお願いについて」
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/6686/00299116/kuni_renraku_2309.pdf

その内容は、東京五輪開催中の2020年7月18日(土)から8月10日(月)の期間中は、学校における部活動やサークル活動などの夏季合宿や林間・臨海学校、修学旅行や遠足などの教育関連旅行を自粛して欲しい、つまりは「やめてほしい」というものです。

要はバスが足らなくなるといけないからということです。

文章中には「オールジャパン」で東京五輪パラリンピックに取り組もうと書かれています。

金メダルを作るために、携帯やスマホ、PCなどを積極的に回収しようという動きもありますよね。「都市鉱山」とよばれる金山(きんざん)発掘ですかね。


☆ブラック・ボランティア
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2020年の東京オリンピックパラリンピックに向けたボランティアの募集が9月26日から始まりました。

目標は11万人。競技会場や選手村で競技運営や観客のサポートをする「大会ボランティア」が8万人、空港や会場の最寄り駅などで交通案内をする「都市ボランティア」が3万人。前者は大会組織委員会、後者は東京都がそれぞれ運営主体になっています。

2012年のロンドン五輪が約7万8000人、2016年のリオ五輪が約5万人だったそうです。今回のボランティアの多さが際立ちます。

ボランティアの数は、その大会の国民の支持の表れを示すそうです

ボランティア11万人は、東京五輪パラリンピックは、日本国民に広く支持されていることのアピールでもあるのです。

大会ボランティアは1日8時間程度(休憩・待機時間含む)で10日以上、都市ボランティアは1日5時間程度(休憩時間含む)で5日以上活動できることが基本条件となっています。

支給されるのは、ユニフォーム一式、活動中の飲食物、ボランティア活動向けの保険と、1日1,000円の独自のプリペイドカード、それ以外にかかったもの(宿泊費等)は全て自腹です。

ちなみに、2016年のリオデジャネイロ五輪では日本の都市ボランティアにあたる「シティ・ホスト」はリオ市が有償で雇用しており、2018年の平昌冬季五輪では交通費が支給され宿泊施設も用意されました。

1998年の長野冬季五輪でも宿泊が必要な県外からの参加者には県が支援をしています。

五輪ではないですが、今夏にジャカルタで開催されたアジア大会は路線バスの無料パスに加え、1日あたり30万ルピア、日本円にして約2300円の日当が支払われたそうです。これは現地の会社員が1日に稼ぐ金額に相当するそうですよ。

これも、東京五輪パラリンピック経費高騰の「しわ寄せ」でしょうかね。

ボランティア保険に関しては詳細はわかりませんが、熱中症対策は万全なのでしょうか...


☆ボランティア募集で国が動くすごさ
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2018年7月、文部科学省スポーツ庁から、国公私立大学長と国公私立高等専門学校長宛てに通知が出されました。

大会期間中に授業や試験を行わないよう授業開始日を繰り上げたり、祝日授業実施の特別措置を学則の変更や文科大臣への届出無しでできること、またボランティアに参加する学生に単位を付与することができると強調しました

都内大学には、授業や試験日をずらしたり、スポーツボランティア養成講座を設け、ボランティ参加で単位を付与するところもあるそうです。

「五輪ボランティアに参加すれば就活に有利になる」という話も出回っています。

中高生に対しては、部活やクラスでの動員による同調圧力が働く危険性の危惧もあり、参加しなければ内申書に響くことを懸念する保護者もいるようです。

もうめちゃくちゃですね。

ここまでは学生に対しての話ですが、企業に向けては、東京都は2018年、ボランティア休暇制度を導入した企業に20万円を助成すると発表しています。

また、こんな話もあります。

富士通は、ボランティアの身元確認や入場管理にマイナンバーカードを活用することに向けた調査研究事業を総務省から受諾したとのことです。まずは11月に宮崎県で開催されるITUトライアスロンワールドカップで実証実験を行うそうです。

ここでマイナンバーか登場してきましたね。


☆レガシー
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東京五輪パラリンピックを語る上で必ず登場する言葉がこの「レガシー」です。「遺産」という訳がつけられています。

レガシーには有形無形のものがあるようですが、社会的なものや文化的財産も含まれるようですが、どうしても建物、五輪のための建造物がイメージされてしまいます。

レガシーのためにお金を使う意義...

これがどうもはっきりとしません。

誘致活動における様々な疑惑もあります。今もって開催反対を表明している著名人の方々もおられます。

会計監査院にはこれからも頑張ってもらって、私たちの税金がどのように使われているのかを、是非チェックして欲しいものです。

よく言われることですが、3兆円もあれば、どれだけの被災者の方が救われるのでしょう。

7000億円しかかからないはずのコンパクト・オリンピックは、いつの間にかあのソチ五輪(約5兆円)に次ぐ、膨大な経費を使った五輪になりそうです...